口にテープを貼っていびきが減ったとしても、睡眠中の呼吸まで正常に戻ったとは判断しにくいものです。音が小さくなったかどうかと、空気が十分に出入りしているかどうかは、別々に確認する必要があるからです。
いびきで隣の人まで起こしてしまうと、口閉じテープのような簡単な対策に目が向きます。
ただし、テープを選ぶ前に区別したいことがあります。減らそうとしているのは騒音なのか、それとも睡眠中に繰り返される呼吸の問題なのか、という点です。

いびきの音が小さくなることと、睡眠中の呼吸が正常であることは区別すべきです。AI補助によるイメージ画像。
いびきの音と、息が止まることはどう違うのでしょうか
眠ると喉の筋肉が緩みます。狭くなった気道を空気が通り、周囲の組織を振動させると、いびきの音が出ることがあります。気道がさらに狭くなったり塞がったりして、空気の流れが繰り返し減少・停止するのが、閉塞性睡眠時無呼吸の問題です。
このとき、酸素が低下したり、睡眠が細切れになったりします。一晩中横になっていても、日中眠くなり、集中しにくくなることがあります。
テープで改善したという研究はあるのでしょうか
口を閉じて鼻呼吸を促すことが役立つ可能性を調べた研究はあります。2022年、台湾の研究者は、口を開けて眠る軽症の睡眠時無呼吸成人20人の在宅睡眠検査を比較しました。テープなしで検査した後、1週間後にテープを貼った状態で再検査しました。
1時間あたりの無呼吸・低呼吸回数の中央値は8.3回から4.7回へ下がり、いびき指数も低下しました。単なる体験談とは違い、呼吸検査で変化を確認した点には意味があります。原著論文
ただし、この研究はテープに耐えられる人だけを対象とし、鼻づまりがある場合は先に治療していました。
参加者はほとんどが男性で、テープを貼らない別の比較群もありませんでした。小規模な後ろ向き研究のため、長期的な効果や一般的な使用の安全性を判断するには不十分です。
特に、参加者は研究に入る前から軽症と診断されていました。まだ検査を受けず重症度も分からない人が、自宅でまねする場合とは出発点が違います。この結果をすべてのいびき患者に当てはめたり、陽圧呼吸療法の代わりにする根拠としたりすることはできません。
一晩中横になっていた時間だけでは、睡眠中の呼吸状態は分かりません。図は陽圧呼吸療法の原理を示す概念図で、実際の患者や臨床結果の写真ではありません。
図:陽圧で上気道を開いた状態に保つ仕組みを説明するため、本記事用に独自作成。
テープが、かえって健康を損なうことも
鼻づまりがある、または睡眠時無呼吸が疑われる場合は、無理に口を閉じる方法を自分だけで試さないほうが安全です。
米国睡眠医学会も、口閉じテープのようなネットで流行する方法は危険になり得ると警告しています。
ちなみに、私自身も少しいびきをかくため、口閉じテープを使い、一晩のいびき時間と酸素飽和度を測ってみたことがあります。睡眠に問題を感じていたわけではなく、いびきを軽くできないかと試したものでした。
ところが、意外な結果でした。
いびきの時間は減り、酸素飽和度も大きく変わらなかったのに、朝の疲れが強くなったのです。深く眠れていなかったということです。
今は口閉じテープを使わず、ときどき鼻腔拡張器を使っています。こちらではいびきが減り、朝も調子よく目覚められました。
もちろん、口閉じテープが役立つ場合もあるので、
それでも使ってみたいなら、次の注意点を必ず守ってください。
使用禁忌と呼吸の安全:最も重要です
事前に鼻の通りを確認すること:
テープを貼る前に、口を閉じ、鼻だけで1~2分間、楽に呼吸できるか確認する必要があります。
鼻炎、副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症、鼻風邪などで鼻が詰まった状態で口を塞ぐと、睡眠中に酸素飽和度が下がり、窒息の危険が生じます。
中等症以上の睡眠時無呼吸に注意:
単なる口呼吸によるいびきではなく、上気道が完全に閉塞する閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の人では、口を塞ぐと、息が詰まった際に口であえぐ代償的な口呼吸まで妨げられ、無呼吸による心血管系の負担が増すおそれがあります。
飲酒後や嘔吐の危険がある場合は禁止:
飲酒後、睡眠薬・鎮静薬の服用後、または胃食道逆流や吐き気がある日には、決して使用してはいけません。
特に睡眠中に嘔吐や胃酸の逆流が起きた際に口が塞がっていると、吐いたものが気道へ入り、誤嚥性肺炎や気道閉塞を引き起こすおそれがあります。
製品の選択と貼り方:
小さな通気孔のある製品や、縦方向・X字状に貼って両側に隙間を残す方法は、唇全体の完全な密閉を避けられることがありますが、
隙間があっても、睡眠中の呼吸の安全が保証されるわけではありません。睡眠時無呼吸が疑われる場合は、貼り方に頼るのではなく、医療機関で評価と助言を受けてください。

ただ、実際に睡眠に問題があると感じるなら、私が最も勧めるのは、医療機関を受診し、睡眠ポリグラフ検査で睡眠時無呼吸の有無を確かめることです。
睡眠時無呼吸が確認された場合は、生活習慣や状態に応じて、陽圧呼吸療法や個別に作製する口腔内装置などの治療を選びます。陽圧呼吸療法は空気圧によって気道が開いた状態を保つのを助けます。唇を貼り合わせる方法とは作用機序そのものが異なり、治療効果が確立しています。
参考資料
Lee YCほか。口呼吸をする軽症閉塞性睡眠時無呼吸成人を対象とした口閉じテープの研究。Healthcare、2022年9月13日。20人、対照群のない後ろ向き研究。
Kapur VKほか。成人の閉塞性睡眠時無呼吸の診断検査に関する診療指針。Journal of Clinical Sleep Medicine、2017年。米国睡眠医学会。
米国睡眠医学会。Viral TikTok trends are not the answer for better sleep。2023年7月25日。
米国国立心肺血液研究所。Sleep Apnea:症状・診断・治療の案内。2025年1月9日更新、2026年10月23日確認。
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