HINREVERSE ENTROPY JOURNAL
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光で脳細胞をオン・オフ?2026年ノーベル生理学・医学賞をわかりやすく解説

著者:チェ・ギョンロク 医師・医科学博士 · 2026-11-04

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2026年のノーベル生理学・医学賞が「光遺伝学」に贈られた理由

今年のノーベル生理学・医学賞は、少しSF映画のような技術に贈られました。

特定の神経細胞に光で作動するスイッチを付け、その活動を調節する技術です。

それがオプトジェネティクス(optogenetics、光遺伝学)です。

Karl Deisseroth、Peter Hegemann、Georg Nagelの3人の科学者が受賞することになりました。内容は少し難しいです。

でも、関心のある方に向けて、できるだけわかりやすく説明してみます。

一言でいうと、

ニューロンに「光で作動するスイッチ」を付けたと考えてください。

光に反応するタンパク質を持つニューロンは、光で刺激できます。逆に、別の種類のタンパク質を使えば活動を抑えることもできます。

選択されたニューロンが光に反応する概念イラスト。
光に反応するタンパク質を持つニューロンだけを選んで刺激できます。実際の顕微鏡写真ではなく、概念イラストです。

出典:AI生成の概念イラスト。

出発点は脳ではなく「緑藻」でした

光遺伝学の出発点は、人間でもマウスでもありませんでした。

Chlamydomonas reinhardtiiという、とても小さな単細胞の緑藻でした。

この緑藻は光に向かって動くことができます。

そのためには、まず「どちらから光が来ているのか」を知る必要があります。

その役割に関わるタンパク質の一つがchannelrhodopsin(チャネルロドプシン)です。

チャネルロドプシンは、細胞膜に埋め込まれたとても小さな扉のようなものです。普段は閉じていますが、特定の光を受けると開きます。

扉が開くとNa⁺などのイオンが移動し、細胞の電気的な状態が変化します。

HegemannとNagelの研究は、このような光開閉型イオンチャネルの性質を明らかにするうえで重要な役割を果たしました。

新しく制作した緑藻の概念図。顕微鏡写真ではありません。
単細胞緑藻Chlamydomonas reinhardtiiと光に反応するチャネルの概念イラスト。電子顕微鏡写真や実験データの再現ではありません。

出典:本文で説明した原理をもとにReverse Entropyが新規制作した概念図。元の出典写真は、商業利用の許可を確認できなかったため差し替えました。 元の研究論文(外部リンク)

科学者たちは、とても巧妙なアイデアを思いつきました

神経細胞も電気信号で働きます。

それなら、この緑藻が持つ光に反応するタンパク質を神経細胞に入れたらどうなるでしょうか。

ニューロンの細胞膜にチャネルロドプシンを作らせる遺伝子を導入します。

すると、もともと光で直接調節することが難しかった神経細胞が、光に反応する細胞に変わります。

そして光を当てるとチャネルロドプシンが開き、イオンが移動してニューロンが活性化します。

ごく簡単に表すと、

光 → 扉が開く → イオンが流入 → ニューロンが発火、です。

ここでいう「発火」は、細胞に火がつくという意味ではありません。神経細胞が電気信号を送ることです。

2005年、研究者たちは、この方法で神経細胞を光によって精密に刺激できることを示しました。

光、チャネル開口、イオン流入、電気信号発生の4段階。
ChR2のようにニューロンを活性化する道具の基本原理。光を受けると細胞膜のチャネルが開き、陽イオンが流入して電気信号を引き起こすことがあります。

出典:Reverse Entropy独自制作の説明図。Boyden ES et al. Nature Neuroscience. 2005;8:1263–1268をもとに再構成。

なぜノーベル賞に値するほど画期的なのでしょうか?

以前から、私たちは脳を見ることができました。

機能的MRIやPETを使えば、ある行動をするときに、どの脳領域の活動が変化するかを観察できます。

例えば、怖い写真を見たときに脳の特定の領域が活性化したとします。

すると、「恐怖を感じるときには、この部分が活性化するのだ」といえます。

しかし、ここには大きな問題があります。

その部分が恐怖の原因なのか、それとも恐怖が生じた後に活性化した結果なのかは、観察だけではわかりにくいのです。

相関関係と因果関係の違いです。

光遺伝学は、この問題を研究する強力な方法をもたらしました。

特定のニューロンだけに光のスイッチを設け、そのニューロンをオンにする。すると行動が変わる。

逆に、その回路を抑制すると、行動が減ったり消えたりすることもあります。

これにより、「この神経回路が、その行動に実際に寄与している」という、はるかに強い根拠が得られます。

もちろん、ニューロンを一つオンにしただけで、複雑な行動の原因をすべて説明したことにはなりません。

それでも、ただ観察することから、直接介入して確かめることへと、研究方法が変わったのです。

脳の中の配線を一本だけ選んでオンにする技術

私たちの脳には、約860億個のニューロンがあります。

ただし、すべてのニューロンが同じ仕事をしているわけではありません。

運動に関わるニューロンもあれば、恐怖・報酬・睡眠・覚醒に関わるものもあります。

かつて複雑な回路を研究するときには、周辺の多数のニューロンを一度に刺激することがよくありました。

光遺伝学の利点は、目的の種類のニューロンを選んで調節できることです。

家全体のブレーカーを落とすのではなく、一つの部屋の照明スイッチだけを押すようなものです。

どの細胞に遺伝子を入れるか、どこに光を当てるかを、両方調節するからです。

すぐに人間にも使えるのでしょうか?

マウスの脳の特定のニューロンに遺伝子を入れ、光ファイバーを挿入することは可能です。

しかし、同じ方法を人間に適用するには多くの課題があります。

まず、狙った神経細胞が光感受性タンパク質を作るように、遺伝子を届ける必要があります。そして、脳の深部まで光も届けなければなりません。

頭の外から懐中電灯を当てれば、脳の奥のニューロンがオンになるわけではありません。

長期間安全に働くことも確かめる必要があります。

そのため、脳疾患の治療に光遺伝学をすぐに使うには、まだ相当な技術的障壁があります。

ただし「目」は少し違います

光遺伝学が人の治療に近づいている分野の一つが、視機能の回復です。

網膜色素変性などの疾患では、光を感知する細胞である視細胞(photoreceptor)が死んでいきます。

しかし、その先で信号を伝える神経細胞の一部は生き残っている場合があります。

それなら、その生き残った細胞に新しい光感知タンパク質を付けたらどうでしょうか。

もともとは光を直接感知する役割ではなかった細胞を、光に反応するようにするのです。

実際に2021年には、網膜色素変性の患者1人に光遺伝学的遺伝子治療と特殊なゴーグルを併用し、視機能が部分的に回復したことが報告されました。

ゴーグルを装着した状態で、物体を見つけ、数え、手で触れる課題を行うことができました。

正常な視力を取り戻した、という意味ではありません。

それでも、生き残った神経細胞に新しい光感知機能を与えるというアイデアが、人でも働きうることを示した例です。

その後も、複数の臨床開発プログラムが進められています。

眼、健康な網膜、視細胞の変性、オプシン遺伝子の導入、光応答、光を増強する装置を示した6段階の図。
網膜の光感知細胞が失われても、一部の神経細胞は残っています。これらの細胞に光に反応するオプシンを導入し、光信号を伝えさせることが、光遺伝学による視機能回復の基本的な考え方です。

出典:Poboży K et al. Evolution of Light-Sensitive Proteins in Optogenetic Approaches for Vision Restoration: A Comprehensive Review. Biomedicines. 2025;13(2):429. Figure 1. Source / CC BY 4.0. 日本語版は原図の6項目をもとに再構成した概念図です。

耳にも応用できます

同じような考え方は、聴覚にも応用されています。

現在の人工内耳は、電気で聴神経を刺激します。

しかし、電流は周囲に広がる性質があるため、神経を細かく分けて刺激するには限界があります。

光で刺激すれば、より狭い領域を区別して刺激できると期待されています。

この技術の本当の意味は「治療法」よりも大きいのです

今回のノーベル賞の最も大きな意味は、脳の研究方法そのものを変えたことにあります。

以前なら、「このニューロンが活動したときに、この行動が現れた」というところまででした。

今は、「自分でこのニューロンをオンにしたら、この行動が現れた」という実験ができるようになりました。

この二つには、とてつもなく大きな違いがあります。

一方は観察であり、もう一方は原因に直接介入する実験です。

そして、始まりは小さな緑藻でした

私がこの研究で最も面白いと感じる部分です。

人間の脳を理解するための技術が、最初から脳を研究して生まれたわけではありません。

小さな緑藻がどのように光を感知するのかを研究する中で発見されたタンパク質から始まりました。

そのタンパク質をニューロンに入れると、目的の種類の神経細胞を光で調節できるようになりました。

この技術は20年余りで現代神経科学の最も重要な道具の一つとなり、ついに2026年のノーベル生理学・医学賞につながりました。

基礎科学がなぜ重要なのかを示す例です。

私は今は医業に携わっていますが、以前は物理学科を卒業しました。

本当に優秀な友人も多くいましたが、韓国では十分に研究することが難しく、ほとんどが海外に出て拠点を築きました。

少しだけ優秀さで劣る友人たちは、生計を立てるために大企業に就職しました。^^

「緑藻はどうやって光を追いかけるのか」という小さな問いが、「人間の記憶や感情はどう作られるのか」という大きな問いを検証する道具になったのです。

基礎科学は、今すぐには成果がないように見えても、後に人類に大きく役立つ研究になるかもしれません。

今後、基礎科学への投資が増え、韓国からもノーベル賞を受賞する科学者が生まれてほしいと願っています。

参考資料

Nobel Assembly. The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2026. 2026年10月5日公式発表

Karolinska Institutet. Shedding light on the brain’s mysteries — the Nobel Prize honours the pioneers of optogenetics. 2026

Boyden ES, et al. Millisecond-timescale, genetically targeted optical control of neural activity. Nature Neuroscience. 2005;8:1263–1268

Sahel JA, et al. Partial recovery of visual function in a blind patient after optogenetic therapy. Nature Medicine. 2021;27:1223–1229

Poboży K, et al. Evolution of Light-Sensitive Proteins in Optogenetic Approaches for Vision Restoration: A Comprehensive Review. Biomedicines. 2025;13:429

German Primate Center. Auditory Neuroscience and Optogenetics Laboratory. 光学式人工内耳の開発状況

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韓国語原文の公開日:2026-10-06。韓国語の原文を読む ↗